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仏教は多様性を認める。間柄を問わない二人のためのお墓「&(安堵)」

2018.08.27

白く美しい円柱状の大理石。実はこれはお墓だ。

證大寺が運営するお墓「&(安堵)」は、LGBTQ+カップルや未婚のパートナー同士など、性別や国籍、宗派など間柄を問わず、ふたりで入ることが出来る。

少子高齢化が急速に進み、従来のお墓が時代にマッチしていないのではないかと指摘されている昨今、「&(安堵)」は新しいお墓の形として注目を集め、2017年度のグッドデザイン賞を受賞。

果たして「&(安堵)」にはどのような想いが込められ、どのような未来を展望しているのだろうか?

「&(安堵)」のプロデューサーで、證大寺の住職を務める井上城治さんにお話を伺った。

(インタビュー:いわみ)

いわみ : 「&(安堵)」のコンセプトを教えてください。

井上 : 「&(安堵)」は、生きているときふたりで契約するのが基本です。一緒に同じお墓に入ると決めることで、これからの人生をよりよく生きることができると私は考えていて。お墓を買うってめでたいことだし、もっと前向きでいいんじゃないかと思います。

いわみ : 「&(安堵)」をはじめるにあたって、LGBTQ+当事者の方と勉強会も開いたそうですね。

井上 : 今まで2回、LGBTQ+についてレクチャーしてもらいました。勉強会なんだけど…途中でお酒を飲んじゃいました(笑)。

いわみ : えー!

井上 : 飲まないと面白くないじゃない(笑)。

いわみ : 確かにそうですけど(笑)。

井上 : LGBTQ+当事者の方から聞いて改めて深刻だと思ったのは、家族から認められないということで悩んでいる人が多いこと。家族などに認めてもらえないLGBTQ+当事者の自殺は異性愛者の数倍というデータがあると聞きました。この問題を仏教で解決したいなと思ったんです。

いわみ : なるほど。これまでのLGBTQ+カップルはお墓をどのようにしてきたのですか?

井上 : 我慢してきたんだと思います。この前も電話で相談を受けました。パートナーが亡くなったけど、その家族がゲイであることを知らなくて…。

いわみ : パートナーが死んだ後にカミングアウトしなければならないってことですよね。

井上 : 悲しいときにそんなことまでしたくないじゃないですか。結局親への配慮で、お葬式をどうするか決められませんでした。

いわみ : それは悲しかっただろうな。難しい問題ですね…。「&(安堵)」はグッドデザイン賞を受賞するなど、話題になりましたが、現在の反響はいかがですか?

井上 : お寺の新しい取り組みとして様々なメディアで取り上げられました。しかし、まだまだこれからという状況です。もっと多くの人に知ってもらい、必要な方に届けられればなと思っています。

いわみ : 多様な生き方が広がりつつある現代において、「&(安堵)」こそ、新たなお墓のスタンダードになると思います。

井上 : 時代の流れに合わせて、お墓もお葬式も変わるべきです。参列者の数は関係ありません。故人とじっくり向き合うことが大切です。そういう意味では、手紙を書くことも、故人と向き合うひとつの方法です。

いわみ : 證大寺は手紙に力を入れる「手紙寺」としても知られていますね。「&(安堵)」では、手紙を通してどのように故人と向き合うのでしょうか?

井上 : 「&(安堵)」では、まず契約者に「手紙箱」を渡して、ここ(手紙処)でパートナーに向けた手紙を書いてもらいます。そして、メッセージを入れた手紙箱を保管させてもらい、亡くなった後、遺されたパートナーに手紙を取りに来てもらいます。そして、ここで返事を書いてもらおうと思っています。

いわみ : 生きていたときに書いた故人の手紙が届くんですね。

井上 : 亡くなった後も忘れられたのではなく、いつも思われていたということを、手紙を通してもう一度伝えたいんです。

いわみ : 手紙を書いて形に残すと、ちゃんと相手と向き合えるように思えます。

井上 : 自分が死んだことにして手紙を書くなんて冗談みたいな話ですけど、いつか必ず死ぬときは来ます。手紙箱に入れたメッセージはいつでも書き直すことができます。本気で相手のことを考えて、何度でも書き直してもらいたいです。

いわみ : なるほど。

井上 : 私も大事な人が亡くなったら、ここでひたすら手紙を書こうかなと思っています。私は母がすごく好きなので、母が死んだら地球が終わるくらいに思うだろうなと。

いわみ:分かります。

井上:でも、そのときにここでお酒を飲んで、泣きながら手紙を書いて…。そこからがスタートだと思います。

いわみ : 仏教ではジェンダーをどのように捉えているのでしょうか?

井上 : 大乗仏教の経典『維摩経(ゆいまきょう)』は男性とか女性とか、決めつけの否定から始まります。実はお釈迦様や親鸞(しんらん)は急進的なんです。

いわみ : 仏教には、独自の男らしさや女らしさの定義のようなものがあると思っていたので意外です。どんな話ですか?

井上 : お坊さんや菩薩などが議論をしているところに天女がやってきて、花を降らせると、保守層だけ身体から花が取れなくなります。天女が「何で花を取ろうとしているの?」と尋ねると、保守層のリーダーのシャーリプトラが「出家にはふさわしくないから」と答えるんです。すると天女が「花自体にはこだわりは無いわよ。こだわりがあるのはあなたでしょう」と言うシーンから始まります。

いわみ:ほう。

井上:シャーリプトラが「お前はここまで分かっているのにどうして女なんだ。女を辞めて男になれば良いじゃないか」と言うと、シャーリプトラが天女の姿に、天女がシャーリプトラの姿になるんです。

すると、天女は女性になったシャーリプトラに「女になったのだから、あなたの中の女らしさを見せてちょうだい。私は女を辞めろと言われたけど、私は長い間、自分の中に女というものを見出さなかった。あなたが男になれるんだったら、私もいつだって男になってあげるわよ。男になってみて」と言って、元に戻すんです。天女が「あなたの中で今、男らしさ女らしさって言える?」と。そしたら、言えないんですよね(笑)。

いわみ : スゴい話ですね。

井上 : 仏教は本当の意味でジェンダーレスです。LGBTQ+という言葉が無くなることがゴールではないでしょうか。このカテゴライズはとても不自由ですから。

いわみ : これからの「&(安堵)」の展望を教えてください。

井上 : 「&(安堵)」は、街中や建物に作れるというコンセプトがあります。例えば、商店街の中に、5メートル四方の「&(安堵)」の空間があったら素敵じゃないですか。気軽にお参りが出来るようにしたいです。東京にもっとお墓があっていいと思います。

いわみ : お墓がより身近な存在になりますね。

井上 : 「&(安堵)」にスリットを入れて、ポストにしたいとも思っていますね。お墓は祈るところなんですけど、形だけ祈るところになってはダメだと思います。向き合って手紙を書いて、投函するという仕組みを 「&(安堵)」を通して、世界に広げていきたいです。

いわみ : 素晴らしい取り組みだと思います。

井上:あと、LGBTQ+の勉強会でお酒を飲んで楽しかったので、これからも開いていきたいです。やっぱり飲まないと本音を語り合えないですよ(笑)。

冗談を交えながらフランクな雰囲気でインタビューに答えてくれた井上城治さん。

しかしその中には、すべての人が安心して最後の時を迎えてもらいたい、故人と心を通わせる環境を作りたいという熱い情熱が感じられた。

まだ死に対してリアリティを感じていない若い世代や、死後に不安を持っているLGBTQ+の方も、「&(安堵)」をきっかけとして、今一度お墓について考えてみてはいかがだろうか。

(撮影 : 常盤 治

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