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学校で伝える多様な性 -先生と学校づくりを考える|認定NPO法人ReBitが開催

2018.09.25

2018年9月24日、東京都の国際オリンピック記念青少年総合センターにて認定NPO法人ReBitが「学校で伝える多様な性 -先生と学校づくりを考える」というイベントを開催した。

このイベントは、子どもへの"多様な性についての教育"の意義や在り方、それを教える先生たちがどのように学校をつくっていくのかにスポットを当てたもので、当日は教師や教育関係者、子どもたちの保護者やLGBTQ+当事者など約100名が集まった。

筆者は中学生時代、保健体育の授業中に教師の口から発せられた「思春期を迎えると自然と異性への関心が高まります。まあ、たまに同性に興味を持ってしまう人もいますけどね〜(笑)」という何気ない嘲笑を今でも覚えている。「そうか、同性に興味を持って"しまう"のは笑われることなんだな」と瞬間的に察知し、自分の性の在り方をそっとクローゼットにしまった生徒は私だけではなかったと思う。

時代は流れ、"LGBT"は多くの人がSNS等で語るトピックスのひとつとなり、多様な性への無理解が生んだニュースも物議を醸すことが多くなった。そんな現代において教育関係者たちが"多様な性についての教育"に着目するのは、もはや次世代の子どもたちのために当たり前になりつつあるのかもしれない。

(筆者:合田 文)

イベントは、千葉大学教育学部教授であり附属小学校長兼任片岡洋子氏の基調講演「性の多様性が尊重される学校を」から始まった。片岡氏は大学の講義や講演を通じて、これから教師になっていく学生や教育関係者に"多様な性についての教育"の重要性を語ってきた人物だ。

実際、学校で性的指向や性自認に対する暴言などを経験した子どもは8割を超え、その約3割は教師からの発言であり、このような暴言に対して教師の6割が反応をせず、放置したという事実があるという。

まずは子どもに教える立場の教師がLGBTなど性の多様性について理解することを推奨する片岡氏だが、特に若い教師たちは"多様な性についての教育"の必要性を分かっているものの、教師が授業を行う際の基準となる学習指導要領に異性愛を前提とする記載があったり、職場の管理職の意識がなかなか"多様な性についての教育"に向かなかったりと、実施するにはなかなかハードルが高いという。同氏は「学習指導要領には、最低これを教えなさいということが書いてあるだけ。異性に関心を持つということに付け足して、同性に惹かれる人もいる、それはおかしなことではないということなどを教師が語ることで安心する子どもがいる。1分、いや30秒でできること」と語った。

また学校で当事者の子どもが可視化されたときに本人への個別の対応が必要なのではなく、それを受け入れる周囲の環境を変えていくほうが大切だとし、「いない(ように見える)からいいよね」と学校や社会が当事者を無視してしまうのが問題で、当事者がいる前提で全ての子供たちに多様な性について教えるべきだと話した。

登壇者の片岡氏(上段右から3番目)、星野氏(下段右から3番目)

このイベントで3つ行われた分科会の中で、小学校教育について触れた星野俊樹氏は「学校で伝える多様な性 教員のあり方という視点から」という題名でスライドをスタートさせた。

小学校の教育現場において、日常的に子どもたちのジェンダーバイアス(社会的・文化的性差別あるいは性的偏見)を揺るがすことを実践している星野氏。

たとえば、小学校1年生の子どもたちは「遠足のお弁当はお母さんがつくるものだ」と思っている。そこで「子どもたちのジェンダーバイアスに揺さぶりをかけるチャンスだ」と思った星野氏は自らお弁当をつくり、遠足に持っていった。自ら"男らしさ"や"女らしさ"を簡単に超える姿を見せたのだ。

ほかにも、たとえば"かわいいもの好き男子"が自分らしくいられる場所をつくるために、「男の子なのに〜〜が好きなんて変だよ」という発言を見逃さず、男性である自らがかわいい遊びを率先するなど、日常の中で多様性に対する肯定的なメッセージを発し続けている。

そして、そのような実践の成果をリセットさせないためにも、子どもの接する時間が長い保護者と教員が良好な関係を作ることが大切だと星野氏は語った。子どもたちの前に、保護者自身も"父"や"妻"などのラベルのみでは語り尽くせない存在であることを念頭に、保護者の多様性への認識をアップグレードしていくためのワークや交流なども行っているという。

同氏は最後に「これからの"多様な性についての教育"を、多くの教員や保護者たちと知恵を出し合ってつくっていけることを楽しみにしている」とイベント参加者たちに語りかけた。

認定NPO法人ReBitのメンバーで、イベント運営者の三戸花菜子氏にもお話を伺った。

合田:どうしてこのイベントをやろうと思ったんですか?

三戸:多様な性についての授業を実践している学校は多いが、表立ってやれていないところが多いんです。やりたい教師は多いのに一歩踏み出せない。そんな課題を持つ教育関係者をつなげていきたいという思いからできました。

合田:実際にどうやったらいいか、なかなかイメージがわきにくいかもしれませんもんね。

三戸:そうなんです。保護者や管理職の反応がこわい教師もたくさんいるはずですしね…。授業をひとつつくるのは大変だけど、日常の中で多様な性についてつたえることが大切だと思っているので、それについて教育関係者の方やこれから教師になる学生さん、教科書会社の方などにも参加していただいてみんなで一緒に考える時間をつくりたかったんです。

合田:ReBitが今、"子ども"に着目する理由を教えてください。

三戸:LGBTの子どもはいじめや自殺のハイリスク層であると指摘されています。"ホモネタ"、"オカマネタ"など、学校のなかで笑いのネタとして使われることは少なくないのにも関わらず、正しい知識を得る機会は多くありません。すべての子どもがありのままで大人になれる社会にしたいと思っています。

合田:なるほど…。

三戸:全国には5万5千校あるからこそ、私たちが行ってきた出張授業だけでは限界があります。安全な学校づくりを担う"アライ先生"が増えることで、LGBTの子どもも安全に過ごせる学校が増えることにつながるのではと考え、教職員が多様な性について学び、児童生徒に教えるまでをサポートする教材キットである「Ally Teacher’s Tool Kit (アライ先生キット)」を作成しました。

合田:教師たちの土台をつくることが大事だということですよね。

三戸:はい。違いを受けとめ合える学校が増えるといいな、と思っています。もちろん、性についてだけでなく。お互いの違いを受け止め合うためのひとつの切り口として、"LGBT"が使われていくようになるんじゃないかなと思います。

多様な性が日常的に顕在化されつつある現代、私たち大人が子どものときよりも、子どもたちが主体性をもって学ぶべきことのひとつであり、また、子どもたちとかかわる大人たちも一緒に学んで行かなければならないかもしれない。

現在、認定NPO法人ReBitでは、LGBT教材を全国500校以上の小学校に無料で届けるためのプロジェクトを行っている。 中学校向けに引き続き、小学校高学年向けにもつくられた「Ally Teacher’s Tool Kit (アライ先生キット)」についても、チェックしていきたい。

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