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おすすめジェンダー絵本|あざれあ図書室スタッフに聞いてみた!【後編】

2018.10.31

ジェンダー絵本を数多く取り揃えるあざれあ図書室を紹介してもらった「おすすめジェンダー絵本【前編】」。後編ではいよいよ、16年もの間スタッフとして働く菊川さんより、ジェンダー絵本をオススメしてもらう。

岩本 : 菊川さんオススメのジェンダー絵本を教えてください!

菊川 : はい!5冊のジェンダー絵本を選んできました。

作:バイロン・バートン / 訳:あかぎかずまさ / 出版社:インターコミュニケーションズ 1999年刊・ポプラ社 2018年刊

菊川 : この絵本で描かれているのは、工事現場なんです。工事現場では男性が働いているというイメージがありますよね?でも、この本の中では女性も描かれている。

岩本 : あっ本当だ、この髪の長い人が女性ですね。

菊川 : 女性だからといって補助的な仕事ではなく、運転など男性とまったく同じ仕事をしています。その様子が本文で何か説明をされているわけでもなくすっと描かれているので、これが1番自然にジェンダーフリーの考えが伝わるかなと思います。この本は0・1歳から読めるので、その点でもこの絵本をおすすめします。

岩本 : 本文で言及しないところがいいですね。「文章でわざわざ言及しないほど当然なんだよ」という作者の意志を感じます。

作:アンソニー・ブラウン / 訳:藤本朝巳 / 出版社:平凡社 2005年刊

菊川 : 2冊目は、「おんぶはこりごり」。お父さんお母さん息子2人のピゴットさんの家族のお話です。お母さんが最終的に、自分ばかりに家事を押し付けるお父さんと息子たちにキレちゃうんです。「ぶたさんたちの おせわは もう こりごり!」って手紙を置いてお家を出ていってしまいます。

岩本 : ここで例えに出されちゃうぶたさんのほうがかわいそうです(笑)

菊川 : そしてお父さんと息子たちはブタになってしまい、お家の中もしっちゃかめっちゃかになります。やっとママが帰ってきてくれると、ようやくママのありがたみを理解してお父さんと息子たちは家事の手伝いをするようになります。

岩本 : 「それに、料理をするのがたのしいと思うようになりました」とあるように、お父さんと息子たちは家事を好きになっていますね!

菊川 : そして最後のページで、ママが車の修理をするんですよね。「家事育児はお母さんの仕事」っていうのはおかしいんじゃないかと気づかせてくれる内容の絵本です。

岩本 : うわ〜、最後のページで鳥肌たっちゃいました…。"女性がしなくてはいけないとされている仕事をするようになった男性"というところで終わりなのかなと思ったのですが、"男性がしなくてはいけないとされている仕事をする女性"を示すことで、本当に平等になっているところが最高です…!

菊川 : そうです。男性・女性のどちらかだけというのではなく。

岩本 : 素敵な絵本ですね。

作:ひがしちから / 出版社:佼成出版社 2015年刊

菊川 : ワーキングマザーが登場する絵本が圧倒的に少ない中で、「おむかえ」は働くお母さんを描いています。お母さんのことが大好きな主人公のこたろう君は保育園に通っています。保育園にいる間はお母さんとバイバイしなくちゃいけなくて、ずーっと泣いているんです(笑)

岩本 : こたろうくんさみしいんだね、がんばれ…(笑)

菊川 : やっと眠れたお昼寝の時間、こたろう君は夢を見ます。お母さんに「仕事に行っている間待ってくれてえらいね」って言われる夢。それで、夢から覚めた後はがんばって保育園の活動に加わってお手伝いもするというお話です。現在7割の母親が働いているのに働いている女性の姿が絵本で描かれていないので、こういうワーキングマザーの絵本をもっと扱っていきたくて集めています。

岩本 : いまは家族や家族構成や関係のあり方も多様になっているのに、子ども向けに描かれている家族像はいまだに働くお父さんと家事をするお母さんで両親がそろっていることが多いですよね。その家族構成が悪いっていうわけではないのですが、もっといろんな姿が絵本の中に存在したほうがいいなぁと思います。今の時代とずれちゃっていますもん。

作:マイケル・ホール / 訳:上田勢子 / 出版社:子どもの未来社 2017年刊

菊川 : 次はLGBTQ+についての絵本です。こういう感じの絵本がようやく最近出版されるようになってよかったなぁと感じます。

岩本 : 赤いクレヨンとラベルづけされていても実際は青いクレヨンの「Red」が主人公なんですね。「赤くて青いクレヨンでいいじゃないか」と。「青だって美しい色だよね」って。

菊川 : 見た目と中身が違うんですよね。Redは本当は「青いクレヨン」なのに、見た目で判断した周りから「イチゴを描けば」と言われてしまう。そして、青いイチゴしか描けないんですよね。

岩本 : 海を上手にかけたことをきっかけに、Redや周りのクレヨンが、「Redは赤いクレヨンの見た目だけど本当は青いクレヨンなんだ」と気付くんですね。そしてその青い色を生かして活躍していっていますね。

菊川 : いろいろな色があって、でもいろんな色にそれぞれたくさん素敵なところがありますよね。LGBTQ+というのはなかなか絵本にするのがむずかしいんですけど、こういう感じで入ると子どもにも伝わると思います。

岩本 : この絵本の中ではLGBTQ+という言葉は出ていないので、この絵本を読んだ子はきっと、自分やほかの人の「自分らしさ」を大切にするという発想になるのかなと思います。

菊川 : そうですね。そもそも、LGBTQ+を理解することは広く言えば外身じゃなくて中身の「自分らしさ」を大切にするということとですよね。

作:ジャニス・レヴィ / 訳:もん / 出版:岩崎書店 2002年刊

菊川 : これは、いろんな家族の形についての絵本です。この家族は、主人公の女の子のお母さんはいないんです。ただ、パパのカノジョがいて。そのカノジョがね、かっこいいんですよ!シングルファザー/シングルマザーを描いた絵本もあるんですけど、ステップファミリー(血縁関係のない関係を含んだ家族体系)を描いた絵本はまだ珍しいんです。

岩本 : パパのカノジョ、最高にかっこいいですね!ファッションやライフスタイルが自分らしくて、主人公を個人として尊重しているところが素敵。

菊川 : 主人公が「パパのカノジョ」って普通に言えるのもいいなって思います。「こういう家族の形のひとつもあるんだよ」というのがもっと理解されればいいなぁと。お父さんがいてお母さんがいて当たり前じゃないし、新しいお父さん・お母さんがきてもいいし、っていう感じの絵本です。

み:絵本の中でいろいろな人間関係を肯定しているだけじゃなく、「自分らしく生きていこうよ」というメッセージが読み取れます。

岩本 : 今月は女の子が主人公の絵本をピックアップしているそうですが、先月のテーマは何でしたか?

菊川 : 先月は「敬老の日」にちなんで、おじいちゃんおばあちゃんが出てくるジェンダー絵本をピックアップしました。「モチモチの木」もありますよ。

岩本 : なつかしい〜!泣き虫の男の子と彼のおじいちゃんのお話ですよね。「モチモチの木」もなんですか?

菊川 : そうです!どのあたりにジェンダーが絡んでいるかわかりますか?

岩本 : う〜ん…主人公の男の子が泣き虫なところ?

菊川 : その通りです!「男の子だからって強くなくてもいいんだよ、泣き虫だっていいんだよ」と読むことができます。何かの本で、ジェンダーの判断をする時に逆の言い方で成り立つかって考えるクセをつけるといいって読みました。「男の子だから泣いちゃダメでしょ」に対して、「女の子だから泣いちゃダメでしょ」とは言わないですよね。ここでおかしいということで、「男らしさ」の押し付けが存在していることがわかります。

岩本 : なるほど!今お話をうかがって、一回そうやって置き換えて判断をしないと「おかしい」って気づけないくらいに、私たちはジェンダーを当たり前だと思っちゃっているということですよね。

菊川 : いわゆる王子さまが来るのを待つのではなく、自分の知恵を使って活躍するお姫さまの絵本もあります。

岩本 : たくさんあるんですね!そういう絵本が増えていることが表しているように、"女らしさ"は目が向けられるようになってきていると感じます。そして、もっと注意深く目を向けていく必要があると思います。ただ、「"女の子らしく"しなくてもいいんだよ」という視点のジェンダー絵本に比べて、「"男の子らしく"しなくていいんだよ」という視点のものは少ないと感じます。「男らしさ」というジェンダーへの認識がまだ追いついていないのではないでしょうか?

菊川 : 今まで、男性の方が女性よりも優位だとされてきて、でもそのなかでも苦しさはあるということがまだ言いづらいのかもしれないですね。

岩本 : 今までは、社会において下位だとされていた女性が男性と平等になるために女性が抑圧されてきた部分でもある"女らしさ"に声をあげてきたと思うんです。これからは、上位だとされてきた男性の"男らしさ"の苦しさにも目を向けて声をあげることが、本質的にすべての個人の平等を叶えるために大切ですね。

菊川 : 性別や性自認に規定されずすべての個人が平等に自分らしく生きるためにも、足を止めてジェンダーに注意を払う必要があります。ジェンダー絵本がその一助になればと思います。

ジェンダー絵本の中には、多種多様な個人や家族の姿が描かれていた。

ジェンダーに目を向け声をあげることは、私たちを押し込める枠組みから解放され多様な選択肢を獲得することだなのだろう。

皆さんもぜひ、ジェンダー絵本を読んでみたりジェンダーの視点を持ってみたりしてほしい。私たちひとりひとりがジェンダーの視点を持つことで、性別や性自認に関わらず個人が"その人らしく"生きることができるやさしい社会を作っていくことができると信じている。

静岡県男女共同参画ポータルサイト あざれあナビ

(撮影:星野 泰晴

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