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諭吉が"オニイタレント"を名乗る理由

2018.11.05

オネエタレントという言葉には馴染みがあると思うが、オニイタレントという言葉を知っているだろうか?

じゃあ、FtMという言葉は?

トランスジェンダーと聞けば少しイメージがわくだろうか?

では、実際に会ったことがあるいう人はどれくらいいるだろうか?

「無い」と思った人は、もしかしたら思い違いかもしれない。ただ、気づかなかったというだけで。

今回Paletteが取材したのは、女性として生まれ、男性として生き、タレントとして活動をしている諭吉さん。男性として生きる彼が、"オニイタレント"を名乗る理由を聞いてみた。

合田:オニイタレントとして活動されている諭吉さんですが、そもそもオニイって何ですか?

諭吉:オネエの反対っていうことです。わかりやすいでしょ?…とはいっても、オニイやオネエという表現は、色々と気をつけなければいけないんです。

合田:というと?

諭吉:そもそもオニイって言葉をあえて使っているのは、女として生まれたけれど、男として生きたり男らしい表現をしたりする、僕たちみたいな人間がいるよっていうことをわかりやすくするためなんです。「そういう人たちがいるんだ」ということを表現しないといけないなと思って。

合田:男性として生きているからこそ「そういう人」であることを言いたくない人も多いと思うのですが、諭吉さんは、自分でオニイタレントを名乗ることで、目に見えるようにしていきたいということですね。

諭吉:そう。でもオニイという言葉で一括りにするのは違うなって。

合田:ん〜、わかります。メディアでも、オネエタレントと呼ばれている人たちが同一視されているというか、同じように扱われていることもありますよね。蓋を開ければ、みんなそれぞれ性の在り方は違うはずなのに。

諭吉:そうなんですよね。僕も最近までFtM(女性として生まれたが、男性として生きる、または生きたい人)3人組のユニットで活動していたんですが、三者三様のオニイであることを出していきました。「FtMにも、色々おんねん!」っていうところを見せたくて。

合田:"LGBT"も"LGBT"として一括りにされがちですもんね。"LGBT"のT(トランスジェンダー:生まれたときの性とは違う性として生きる、または生きたい人)の中の、更にFtMが同じように見えてしまうのもわかる。でも、どんな性を好きになるかや自分をどんな性として捉えているか、どういう性表現をしたいのかは本当に人それぞれですよね。

諭吉:目に見えているものだけで判断しないことが大事だと思うんです。性の在り方は100人いたら、100人正解なんだよってことを伝えたい。オニイ、つまりFtMの中でもいろいろいるんですよ。FtMゲイとかね。

合田:女性として生まれたけれど男性として生きることを選択して、男性として男性が好きな人のことですよね。

諭吉:「こういう見た目だからきっと、男がすきなんだろう、女が好きなんだろう」とかって、実は全然違ったりするもんで。僕なんかよくゲイ男性に間違われて、異性愛者の男性から「オレはソッチの趣味はないからな!」なんて失礼なことも言われるんですけど、「いや、オレかて、ちゃうわ!」と。

合田:見た目で判断して、決めつけちゃったんですね。その人には同性愛男性に見えた諭吉さんは、本当はトランスジェンダー男性の異性愛者。…う〜ん、見た目では本当に判断できませんよね。

合田:実際、諭吉さんの恋愛対象は?

諭吉:女性が好きです。とはいっても彼女はずっといないなぁ…。最近までアイドルユニットを組んでいましたしね。なんかね、ファンの方々ひとりひとりと恋してたっていう感じ。

うっ…なんなんだ、このイケメンは…

合田:女性ファンだけでなく、例えば若い異性愛男性からも憧れられそうだなあ…。ファッションとか髪型も、すごくご自分に似合うものを理解していそう。

諭吉:確かに、だんだん自分に合うものがわかってきて、ファッションは楽しくなっていきました。FtMって女性らしい特徴を隠そうとしてわざとブカブカな服装をしがちなんですけど、それが余計に女の子っぽく見えちゃったり。

合田:髪型なんかも、短くしすぎて逆に女性っぽさが目立つ場合もありますよね。

諭吉:もちろん、好きなファッションや髪型だと思ってやってるならいいけど、これが男らしいとか決めすぎないのが大事だなって。

合田:決めつけない。あらゆることに関して、そうですよね。

諭吉:どうなるかわからないんですよ。例えば「俺は男と寝るくらいなら死んだほうがマシだ」とか言って決めつけている人も、FtMの中でもFtMゲイに対して「そんなんありえない(笑)」って馬鹿にしてしまう人も。僕だって、明日男の人を好きになるかも知れないし。

「みんな頭固い!」と、諭吉さん。

諭吉:好きな食べ物とか出身地とか一人ひとり違っても受け入れられるのに、なんで性の場合だけそんなにおかしいの?って話なんですよ。もちろん、誰かに迷惑かけるようなことや傷つけるようなことする人はアカン。でも、女の子に生まれて女の子好きなのがそんなにアカンのか?って。

合田:わかるなあ。でも、少しずつ、変わってきているのも実感しますね。

諭吉:そうですね。でもそれって、昔の当事者の人たちが石ころ投げられたり虐げられたりしてもめげずに頑張ってきてくれたからなんだよなって。だから僕も次の若い世代に「僕たちおじさんたちもがんばって繋げていくから、君らもそれを受け継いで、自分の下の子たちに繋いでくれ」って思います。

合田:メディアでのオネエタレントの扱い方も少しずつ変わってきているとはいえ、やはりおもしろいキャラクターや笑っても良い対象として扱われることも多い。きっとそこも、気をつけなければいけないポイントのひとつですよね。

諭吉:僕もオニイという言葉を使っていて、厳しいご指摘をもらうこともあります。ただ、まずはやはり「こういう人も、普通にいるんだ」ということを広めていくことが使命なんじゃないかなって。「こういう人も、芸能人として活動しているんだ」ということを。

合田:FtMって、メディアに出てこないですもんね。

諭吉:扱いにくいんだと思います。テレビとか出させてもらっても、下手に触れてやけどしたくない感じというか、相当気使ってもらってる感じがします(笑)。

諭吉:オネエはおもしろくて扱いやすいし、男は笑ってもいいけど、女は笑いもんにしたらアカンみたいな。そういう社会のつくりになっちゃってるんですよね。

合田:女の子は弱くて守らなくちゃいけなくて、男は雑に扱ってもいい、みたいなやつですね。そもそもオネエタレントは男性として生きている人だけではないのに、"雑に扱ってもいい男性"としてメディアに出てくるのも気になりますけど…。

諭吉:メディアは結局おもしろいかどうか、なんですよね。FtMが出てこない理由のひとつはそれなんですよ。でも、いつまでも見えない存在ではいられない。だから僕は「オニイっていう言葉使うのどうなん?」ってことは、今は気にしていられないかも、と思っているんです。勇気や元気をもらってくれて、前向きになってくれる人がいるなら、この仕事を続けていきたい。

合田:先駆者として諭吉さんが「FtMにも色々いて一括りにはできない」ということや「笑いものにしていいわけではない」 ということをセットで伝えていって欲しいです。

諭吉:FtMで芸能興味ある人も絶対いると思うから、どんどんそういう人がチャレンジできる場所ができたらいいなって。まだ誰もロールモデルになることに成功していないから、僕がそうなっていきたい。 まあ、それで僕の仕事が少なくなったら困るんですけど、それはそれで嬉しい痛みかも(笑)。

そう言って、無邪気に笑っていた諭吉さん。その瞳の奥には、自分がロールモデルとして道を切り開いていこうとする先駆者の熱さを感じた。

「自分たちは、ここにいる」

そう訴えるために芸能の道へ進んだ諭吉さん。そしてメディアをつくる私たち。

畑は違えど、お互いの得意分野が発揮できるフィールドで、誰かの勇気になったり誰かの常識をアップデートしていったりと、まだまだ頑張れることをやっていこう。

そんな、若干エモすぎる話までして、インタビューは幕を閉じたのだった。

(撮影:

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