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「普通の人なんてどこにもいない」LiLiCoが語る、私たちが変わるべきこと

2018.08.01

「正直、LGBTQ+について特別話すことはないんですよね」

これは、LiLiCoさんが着席して3分後に発した言葉である。 17時に始まったインタビューは気づくと19時を回っていた。2時間対話してわかったことがある。彼女の世界には「普通」などという概念は存在しないのだ。

(インタビュアー:パレット編集部)

編集部 : LiLiCoさんが思う、LGBTQ+への偏見を持つ人が見るべき映画といえば、何がありますか?

LiLiCo : 私にはゲイの友達が沢山いるし、LGBTQ+は特別なトピックスじゃないんですよね。「私LGBTQ+なんです」って言われるのは「私フリーターなんです」と告白されるのと変わらない。だからどうしたの?という感じ。私は、偏見を持ってる人とはそもそも友だちにならないし、偏見を持っている人は相手にしなくていい。そちらの方がマイノリティだからね。だから、そういう人に向けての映画と言われてもね…。

編集部 : なるほど… 。(心の声:どうしよう…)
LiLiCoさんご自身や周りの方ではいないかもしれないのですが、差別にさらされている人もいるんです。特に金銭的にも精神的にも自立できていない若い当事者は特に、親世代に生活を握られているので、彼らがつくる「LGBTQ+がおかしい」という風潮を浴びて育ち、自分はおかしいと思い込んでしまうことなんかもあって。道を歩いていて心ない言葉を浴びたり、自殺に追いやられてしまう人もいるたりするんです。

LiLiCo : そんなことがあるんですね…。今初めて知ったので、結構ショックです。「偏見を持ってる人は恥を知れ」ってタイトルで書いたらどうかな?だって、エロ雑誌読むのは?AV観るのは普通なの?来年から平成でもないんだし、まだそんな風に偏見を持ってる人は恥ずかしいと思った方がいい。結婚して子供産むっていうのは古い日本の当たり前で、それよりも心からハグできる相手がいる方が大事だよ。

編集部 : LiLiCoさんのそんな強くてまっすぐな考えは、いつから生まれたのでしょうか?

LiLiCo : 私の出身のスウェーデンでは、セクシュアリティのことに限らず、いろいろな価値観や個性を持った人がいたんです。近所に住んでる友だちのお母さんがアル中だったり、同性同士が手をつないで歩いているのもよく見る光景。女の子同士とかちょ〜イケてるじゃん!って思うし、日本でいう「そんなのいない!」と思っている人はいないのよね。

編集部 : スウェーデンは日本に比べるとかなり進んでいるイメージです。実際のところはどうですか?

LiLiCo : 私は1998年のスウェーデン映画『ショー・ミー・ラヴ』がすごく好きで。スウェーデンでは『タイタニック』の興行収入を超えた作品なんですね。ストーリーとしては思春期の女の子同士が好意を寄せ合って、酒を覚え、親への反発を描いたりする内容なのだけど、みんな興味があったし、理解力があったから流行ってたと思いますね。日本はエンタメも教育も、50年遅れてる。

今年2018年に公開された映画、『ワンダー君は太陽』。LiLiCoさんはこれ以上にやさしい映画はないと語る。

ワンダー君は太陽のあらすじ
10歳のオギー・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)は、普通の子には見えない。遺伝子の疾患で、人とは違う顔で生まれてきたのだ。27回もの手術を受けたせいで、一度も学校へ通わずに自宅学習を続けてきたオギーだが、母親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)は夫のネート(オーウェン・ウィルソン)の「まだ早い」という反対を押し切って、オギーを5年生の初日から学校に行かせようと決意する。

映画『ワンダー 君は太陽』公式サイト - キノフィルムズ

LiLiCo : 『ワンダー君は太陽』は優しさ、メッセージ性の強さで今年ナンバーワンの映画かな!LGBTQ+がテーマの作品ではないけれど、根本的な考え方を変えるという意味で、これ以上にやさしい映画はありません。この作品で感じたのは、子どもたちの心がいちばん綺麗だということ。親世代にはまだ古い考えを持っている人も多いかもしれないけれど、ここ30年くらいでも、人の理解力はどんどん広がっていると思う。

実際に編集部のメンバーである私も鑑賞したが、主人公オギーの通う学校の校長先生の台詞が強く印象に残っている。
「普通じゃない」とされているオギーは、クラスメイトからいじめられ、そのことに気付いた校長先生はいじめたクラスメイトとその両親を呼び出す。そして以下のように説くのである。

「オギーの見た目は変えられない。我々が見る角度を変えなければ」

例えば人の見た目や性格、生まれた国や性的指向は他人が変えようと思って簡単に変えられるものではない。ただそこに存在している事実を、周囲がいかに柔軟に受け入れられるかが重要である。そして、LiLiCoさんはそれをごく自然に、息をするように出来ている人物なのだ。

編集部 : 日本では当たり前のように、幼少期から異性を好きになると教えられます。それが普通とされていることについては、どう思いますか?

LiLiCo : 世界にはカレーを手で食べる人がいて、その人たちからしたらスプーンで食べる方が変でしょう。人それぞれの生き方があるのに、頭ごなしに否定する人は大した理由もないんじゃないかな。周りに流されて自分を持っていないだけ。日本のこうじゃなきゃいけないというマニュアルがいちばんつまらない!当事者のみなさんが「自分はセクシュアルマイノリティだから…」と意識することによって複雑になっているところはあるのかも。私の場合は最初にも言ったように「ゲイなんです」と言われても「そうですか。それで?」と思いますし(笑)。私はハーフだけど、ハーフをすごい意識してるわけではないから…自分のその姿勢を見つめ直してもいいかもしれません。本人同士が笑って、理解してくれる人といられればいいじゃないのかな。幸せそうな人でもみんな何かと闘ってるし、みんな変わっていかなきゃ。もう少しで変わるよ、大丈夫。


太陽のようにキラキラした笑顔で語るLiLiCoさんの目には、一点の曇りもない。 世の中や人を変えるのは難しいが、自分を変えることは今すぐにできる。 LGBTQ+当事者であっても、当事者でなくても、変わらなくてはいけない時代なのだ。 彼女が見ているのと同じ、「普通の存在しない世界」に向けて。

(撮影:mei

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