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結局のところ、何ができるようになるの? パートナーシップ制度比較早見表

2018.08.11

長年連れ添ったパートナーであるにも関わらず、お別れのときに会うことも叶わない。なぜなら、同性同士のカップルだから―。

そういった状況のもと、同性パートナーの権利を訴える声が上がり、できたのが同性パートナーシップ制度。2015年に渋谷区で開始されてから、多くの自治体が導入もしくは導入の検討を始めている。

「LGBTQ+の認知が広がり、社会的な制度が整ってきた!」とポジティブな気持ちになる一方、この制度で実際何ができるようになったのか、実は当事者でさえ、よく解っていなかったりする。

各自治体のパートナーシップ制度、そこにどんな違いがあり、何ができて何ができないのだろうか?また、婚姻との違いはどこにあるのだろうか?

そんな疑問を解決すべく、今回Palette編集部では"パートナーシップ制度比較早見表"を作ってみることにした。

まずは、どこにパートナーシップ制度があるのかをおさらいしてみよう。

2018年8月には新しく大阪市でも制度が開始し、全部で8つの自治体で導入されている。
検討中の自治体も含めると、その広がりは一目瞭然だ。

また、パートナーシップ制度には、大きく分けて"渋谷区型"と"世田谷区型"がある。
この2つ、何が違うのかポイントをしぼって比較してみよう。

ポイント① "条例"と"要綱"の差

渋谷区型の"条例"とは自治体の議会で決議される法規のことで、国の法律よりは弱いけれど一応その地域では法律のようなものとして扱われる。
だから、もし条例に違反した場合、自治体は罰則などを課すこともできるのだ。

渋谷区のパートナーシップの条例でいうなら、例えば同性カップルにアパートを貸すことを断った事業者に是正勧告を出して、それでも改善しない場合には、事業者名を公表することもできる。
一方、世田谷区型の"要綱"とは役所が仕事をする上でのいわゆるマニュアルのようなもので、「同性のパートナーにも等しく権利を認めていこう」という職員間の意識の共有が目的だ。
世田谷区型は、同性カップルにアパートを貸すことを断った事業者にも"協力を要請する"ということしかできない。

つまり、世田谷区型に比べて、渋谷区型のほうが強い実行力を持っているといことだ。

この2つの自治体以外でも、2018年8月現在、全国で、伊賀市、宝塚市、那覇市、札幌市、福岡市が同性パートナーシップ制度を導入しているが、いずれも世田谷区型の要綱モデルになっている。


ポイント② 渋谷区型は"約6〜8万円"、世田谷区型は"無料"

2つ目のポイントとして、申請にかかる費用が大きく違うことも知っておきたい。渋谷区型では、申請のときに

"任意後見契約公正証書"と"合意契約公正証書"

この2種類(合わせて3通)の書類を作成することになっており、これに約6万〜8万円の費用がかかるのだ。異性間の婚姻届と比べても高額な費用がかかることがわかる。特に若い同性カップルにとって、これはハードルの高さにつながるだろう。

一方世田谷区型は、無料で申請することができる。事前の申し込みは必要だが、当日は窓口に身分証明書を持っていって、必要書類に記入するだけでいい。宣誓書は即日発行される。その手軽さが、世田谷区型の大きな魅力だろう。


ポイント③ 実際にできるようになってきたこと

今まで家族向けの公営住宅には、法律上の夫婦しか入居することができなかったが、渋谷区、世田谷区、伊賀市、那覇市ではパートナーシップ制度を利用した同性カップルも入居できるようになった。

※ パートナーシップ制度自体は導入していなくても、文京区は区営住宅に同性カップルも入居できるなど、自治体による。

そして男女の夫婦向けだったサービスが、同性カップルも利用できるようになってきた。
一部の生命保険は、パートナーが亡くなったとき、保険金をその人のパートナーが同性であっても受け取れるようにし、携帯電話の家族割引やクレジットカードの契約のときなどにも、異性間カップルと同じようにサービスを受けられることが増えてきた。

また、もしパートナーが急病や怪我で入院したとき、今までは法律上の家族以外が病状の説明を聞いたり、治療方針を決めたりすることはとても難しかった。危篤のときに会うこともできない、というつらい経験をしたカップルもいるが、ふたりの関係を公に証明できるようになれば、少しずつ改善していく可能性がある。

同じように、賃貸を契約するとき、同性カップルであることを理由に断られるということが起こっているが、公に認められたカップルとなれば、そのようなトラブルも少しずつ解決していくだろう。

※ 札幌市と大阪市は様々なシチュエーションでふたりの関係性を証明できるように携帯性を重視した受領カードの発行を開始した。

まだまだ異性愛が当たり前の日本で、同姓パートナーシップ制度が導入されたことは大きな一歩だ。地方自治体がふたりの関係性を公に認めることで、たくさんの変化が生まれてきた。多くのLGBTQ+当事者が、社会は明るい方向へ向かっていると実感しているのではないだろうか。

しかし、こうした制度には、実はまだまだたくさんの課題がある。
今度は法律婚との差に注目しながら、確認してみよう。

異性カップルと同性カップルを結婚という軸で比較すると、どんな違いがあるだろう?

異性カップルには法律婚とは別に事実婚というスタイルも認められているが、この事実婚も、法律婚と比べると保証されていない権利がある。事実婚も合わせて、どんな違いがあるのか表を作ってみた。

またいくつかのポイントに分けて、各々について確認していこう。

ポイント① 埋まらない異性カップルとの差

まず、税制面での優遇は、全くない。同性パートナーシップ制度は、国の法律で決まっているわけではない。法律で決められた夫婦の権利は、同性のカップルには認められていないのが現状だ。同性パートナーシップ制度は同性婚(同性の法律婚)とは大きく違うのだ。

また先に挙げた、家族向けのサービスや病院での面会なども、実は確実に受けられるようになったわけではない。特に、上でも説明したように世田谷区型は条例ではないため、あくまで自治体が、同性カップルにも同じサービスを提供するようにお願いすることはできるが、強制はできないのだ。

つまり、同性カップルが等しいサービスを受けられるかどうかは、"人々の意識に大きく左右されてしまう"ということである。愛するパートナーの危篤のときに会えるか会えないかが、その病院の意識によって決まってしまうのだ。

※ 伊賀市でパートナーシップを結んだカップルは同市市立病院ではこうした権利を保証される。


ポイント② 同性しかパートナーになれない?

同制度は、同性同士のみに利用が限られている。
戸籍上女性のトランスジェンダー男性と戸籍上男性のカップルは、戸籍上は異性カップルとなるためにこの制度を利用することはできない。戸籍上は異性でも、そのまま結婚することは、カップルによっては自分たちのあり方とは違う形だと感じる可能性もある。

また、トランスジェンダーの人は複数の医師の診断や性別適合手術などを経て戸籍上の性を変えるため、診断や手術には高額の費用がかかる上に、身体への負担も大きく、誰もができるわけではない。自分たちの望む性で結婚することも、パートナーシップ制度を利用することもできない人たちがいる。多様性を推進するはずの取り組みなのにも関わらず、そこから排除されてしまうということだ。

※ 渋谷区などでは特例として戸籍上異性同士のパートナーシップが認められることもある。
※ 札幌市ではこうした問題を受け、多様な性のあり方、カップルのあり方に対応しようと、同性に限らず異性間のパートナーシップ申請もできるようになった。


ポイント③ 好きな所には住めない?

現在導入されているパートナーシップ制度はそれぞれの自治体が行っているもので、その地域に住んでいることが申請の条件。制度を使おうと思えば、引っ越さなければならない人もいるということだ。自治体発の制度だから当たり前、という気もするが、異性カップルの結婚であれはどこに住んでいてもできるのが当たり前、ということを思い出してほしい。

また渋谷区や世田谷区は家賃が高いことで有名だ。全ての同性カップルがそうした高い家賃の地域に住めるのだろうか?また、仕事の都合などでその地域からでなくてはいけなくなったときには、パートナーシップは解消しなくてはいけない。住み慣れた土地、住みたい土地、これから住むかもしれない土地。どこにいてもパートナーと生活を営む権利は、同性カップルには保証されていない。

最初の同性パートナーシップが導入されてから約3年が経った。
現在、パートナーシップ制度を導入している自治体は全国で8つだが、具体的な検討を始めている自治体はさらに多く、これからどんどん広まっていくだろう。
これは、社会の中で、LGBTQ+への理解がより深まる大きなチャンスであることは間違いない。当事者も、自分たちの生きる上での選択肢の広がりに希望を持っているのではないだろうか。

しかし、実際に何ができるようになったのかという視点で見てみると、制度自体にもまだまだ改善できることはたくさんある。今はまだ、より良い制度を目指して、様々な自治体が議論を進めている過程にすぎず、「平等性が認められた」と、手放しに喜べるわけではないかもしれない。

セクシュアリティにかかわらず、自由にパートナーとの生き方が決められる社会。
その実現のために私たちに何ができるだろうか?

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