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私は「ゲイだから」って何かを諦めない!二丁目の魁カミングアウト ミキティー本物インタビュー

2018.09.06

朝、7時。インタビュアーの私は、新宿2丁目に立っていた。
とあるアイドルグループの無料ライブを見に来たのである。

その名も、「二丁目の魁カミングアウト」。
構成メンバーの4人は、全員ゲイ。彼らは、世界初の"ゲイアイドル"なのだ。

「ゲイでもアイドルになれる!」をコンセプトに活動する彼らのライブは、早朝にも関わらずたくさんのおなカマ(「二丁目の魁カミングアウト」のファン)によって大層盛り上がり、初めて参戦した私もいつの間にか、彼らのパフォーマンスに魅了されていった。

仕事で来たはずなのに、テンションが上がった私は、実はチェキにも並んでしまった。

「インタビューの前にライブが見たくて、来ました…!」と緊張しながら伝えた私に「ライブ、楽しかったでしょ?」と自信満々な笑顔で笑いかけてくれたメンバーがいる。彼こそが本日のインタビューのお相手、ミキティー本物さん。「二丁目の魁カミングアウト」のリーダーであり、振り付け、作詞作曲までこなすプロデューサーだ。

(インタビュアー:合田 文)

合田:「ゲイでもアイドルになれる!」というコンセプトでアイドル活動をされているミキティーさんですが、やっぱり"ゲイであることを理由に諦めなきゃいけないこと"って、ありましたか?

ミキティー本物:思春期になって同性に恋をして、でも叶わなくて、初めて大切なものを諦めたと同時に自分がゲイだと自覚するから、"諦め"から始まっちゃう人がほとんどなんじゃないかな、ゲイって。

合田:なるほど。ゲイとして歩んでいく最初の一歩が、"諦め"…。

ミキティー本物:スタートがそうなっちゃっているから、ことあるごとに私も「ゲイだからコレはできない、アレもできない」とか「ゲイだから飲むんだったら新宿2丁目に行かなきゃ」とか、自分がゲイであることを理由にいろんなことを周りのせいにして、諦めてきたかもしれません。

合田:でも「アイドルになる」ということは、諦めなかった。

ミキティー本物:そうです。もともとアイドルが大好きで、モーニング娘。に憧れていて。

合田:モー娘。私も好きでした!確か90年代の終わりに大ブームだったから、私は小学校低学年でしたねぇ。

ミキティー本物:私は…今、24歳っていう設定だから…幼稚園のときから好きってことになりますね…(笑)。まだ小さかったんで、自分も大きくなったらアイドルになれると思っていて、オーディションにも応募していました。

合田:(この人、私より若い設定だったんだな…)

ミキティー本物:でも途中で、性別が違うからモー娘。にはなれないと気づいて、それでも諦めきれなくて。いろんな場所で好きな踊りを続けていたら、たまたまステージに立たせて頂くチャンスをもらって。パフォーマンスが終わったときに、「同じ音楽が好きな人たちが集まる空間で歌ったり踊ったりすると、性別なんて関係なくみんなで楽しむことができるんだ。アイドル、諦めたくないな…」と、思ったんです。

合田:そして、ゲイアイドルをやろうと思われたのですね。

ミキティー本物:はい。いろいろ諦めてきた私が、二度と「ゲイだから」ということで何かを諦めないって決めて、逆に「ゲイだから」できることをやろうと思って"ゲイアイドル"を始めたんです。

合田:ミキティーさんは振付師としても活躍されていますが、もともと振り付けのお仕事をされていたんですか?

ミキティー本物:いや、実は逆なんです。先に「二丁目の魁カミングアウト」の元となるグループを結成していて、「つくったはいいけどどうやってこのグループを大きくしようかな」と考えているときに、テレビに出ているゲイの方に注目したら、みんな肩書きを持っていたんですよね。"コラムニスト"とか"メイクアップアーティスト"とか。だから「私も何か肩書きを持って、説得力のあるアイドルになろう」と思って、始めたのが振付師だったんです。「BiS」っていうアイドルグループに「私、振付師なんだけど、振り付けやらせて」って嘘ついてやらせてもらったりしていました(笑)。

合田:すごい手口(笑)。

ミキティー本物:そうなんです(笑)。だから、私が本当にやりたかったのは、最初からアイドル。アイドル活動を広めて、説得力を出すために振付師をやっていたんです。

合田:すごい策士ですね。目的から逆算して行動している…。

ミキティー本物:でも、目指すところは徐々に変わっていきましたね。

合田:というと?

ミキティー本物:最初は歌って踊って、それでいいと思っていたんですが、アイドルとしての"私たちの在り方"を考えるようになりました。たとえば、おなカマに同じCDは一枚しか買わせたくないし、いくら人気になっても、チェキの値段は上げたくない。私たちがやりたいことは、いつも、おなカマのみなさんが喜ぶことなんです。

合田:ファン第一、素敵ですね…。「二丁目の魁カミングアウト」からは、ぶっちゃけあんまりイロモノ感を感じないんですが、そこもこだわっているんですか?

ミキティー本物:そうですね。私自身「ゲイだから、おもしろくなきゃ」という期待に押しつぶされそうになったこともあって。性格上そんなに明るくないのに、学生時代は無理をしていて「みんなが期待するゲイ」を演じていたりして。

合田:みんなが持っているゲイのイメージは、テレビに出ているオネエタレントの影響も大きいですが、「ゲイだからおもしろい」って、「関西人だからおもしろい」くらいの乱暴さですよね(笑)。

ミキティー本物:そうそう(笑)。でも、私はステージに立つようになってから、無理をしなくなったんです。「そのままでいいよ」ってみんなに言われて。そんな言葉、かけてもらったことがなかったので、すごく救われました。だから今こうしてアイドル活動をして、ステージに立っているときのほうが逆に自然体なんです。

合田:めちゃくちゃ天職じゃないですか…。無理のない等身大のミキティーさんが、ファンの方に喜んでもらえるって、すごく良いことですね。

ミキティー本物:ありがたいです。だから、イロモノ感も無理して出す必要はないかなって。私だってたまには下ネタも言うし、おもしろいことも言うけれど、芸人さんみたいに笑わせようとして言うんじゃなくて、自然に、会話するようにナチュラルに話すくらいでいい。

合田:"多様性"といいつつも、ゲイのイメージが画一化されてしまっている中で、ミキティーさんのように自然体で働く、様々な職種のロールモデルが出てくると良いですよね。

ミキティー本物:私は「ゲイの方がもっと住みやすい世界をつくりたい」だなんて大それたことは考えていなくて。でも予想では10年後にはもっとゲイアイドルがふえているんじゃないかな。今はまだ多様性が受け入れられにくくて、活動していると「えっ?」っていう目で見られたりもします。でも私たちの活動を通して、未来のゲイアイドルたちが「そういうのもいいね」と受け入れられるような世界がつくれたらいいな。そういった意味で、グループ名にも「魁(さきがけ)」って入れたんです。世の中は簡単には変わらないし、私たちにはこれからもコツコツ頑張っていくことしか、できないんだけれど。

合田:きっといきなり変わるのではなくて、積み上げてきたものが少しずつ世界を変える、という感じですね。

ミキティー本物:大きな女性アイドルのイベントにも出させてもらっているんですが、以前は他のアイドルグループの男性ファンに中指を立てられたりしていた私たちが、今では男性のお客さんに「勇気もらいました」って言ってもらえたりするんですよ。

合田:今後のミキティーさんは、どんなことにチャレンジしていくのでしょうか?

ミキティー本物:もともと全然、外見にも歌やダンスにも自信がなくて、グループが大きくなってきたらプロデュースのほうに徹してステージを降りようと思っていたんですが、アイドルを続けて、メンバーやおなカマや、いろんな方と会うにつれて「自分のコンプレックスさえも気にならなくなるくらい、好きになれるものってあるんだな」って気づいたんです。だから私はそんな理由でもう、ステージを降りるなんて言わない。シワが増えたとか、太った、とか(笑)。だから今後私がやりたいことは、どんなにしわくちゃになっても身体が動かなくなっても、ステージを降りないということ。

合田:カッコよすぎます…。人との出会い、そして自分のやりたいことを諦めずに貫いたからこそ、ですね。

ミキティー本物:孤独な人っていっぱいいると思うけど、人との出会いは必ずきっかけになると思うから、出会いというものを恐れてほしくないなと思っています。私が歌の歌詞にも書いたとおりなんだけど、すこしものの見方を変えたり、前髪をちょっと切ったりするだけで、ものごとっていろんな見え方になっていくから。

合田:大切なのは、自分から見る角度を変えるということですね。

ミキティー本物:きっとやりたいことにも大きな壁があるように見えるけれど、その先の道はちょっと回り道したり、背伸びたりすれば見えてくるかもしれない。人って、目の前の障害物ばかり見ちゃうから。もし「自分がゲイだ」ということを壁だと感じているんだったら、それを踏み台だって思えるように、ちょっとだけ見方を変えて、前に進んで行けたらいいですよね。もちろん言葉でいうのは簡単で、実際にやるのは難しいんだけどね。

合田:(じ〜〜〜ん)ミキティーさんって…すごく、名言メーカーですよね…。

ミキティー本物:なんてったって、作詞家ですから。

合田:そいつは、お見それいたしました…!

「人に何かを与えたり励ましたりする量より、まだ応援してもらっているほうが多い。私たちから与えられる量がそれを追い越すことができれば、真のアイドルだと思う」

ミキティー本物さんは、そんなことも語ってくれた。

「ゲイでもアイドルになれる!」

彼らはまだ、そのサクセスストーリーの途中にいるのかもしれない。

彼は「ゲイであること」を理由に何かを諦めるのをやめたと同時に、「ゲイアイドル」という新たな道を先駆け始めた。道なき道は決して平坦ではなく、歩いているだけで誰かに中指を立てられることもある。

しかし彼らの積み上げてきたものはしっかりと足場をつくり、次世代へと繋がっていくのだろう。 彼らの背中を追いかけるように、その道を歩み始める新たな若者たちの誕生も近いのかもしれない。


(撮影:常盤治

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