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一体なにがどう大変なの?同性カップルが理想の物件に出会うまで

2018.11.12

男女のカップルと同じように、LGBTQ+のカップルも付き合いが長くなるにつれて同棲を意識する人は多い。だが一方で、同性のカップルが家を探すとき、男女のカップルの場合とはまた違った困難がある。実際に同性のパートナーと部屋探しをしてみて苦労を感じた人や、友人たちから話を聞いてなんとなく大変そうと感じている人もいるだろう。

では、具体的に何が大変なのだろうか?どこに障害があるかを知れば、つまずく前に対処もできる。Palette編集部でパートナーと同棲をしている二人が、部屋探しの苦労や対処法を探った。

左:中野 右:小沼

小沼(ゲイ。2017年10月からパートナーと同棲中):今回は同性カップルの部屋探しがテーマです。いきなりだけど、中野さんは部屋探しって大変だった?

中野(レズビアン。2017年7月からパートナーと同棲中):今の家を見つけるまでに不動産の仲介業者を3店まわったし、やっぱり大変だったかな。それに、部屋探しをする中でモヤっとしたこともたくさんあった。

小沼:うちも彼氏と話していたら「難航するだろうと思っていたけど、ここまでとは思ってなかった」と言っていたよ。

中野:部屋探しの困難さは不動産・住宅の情報サイトを見ていても感じるよね。「カップル・ファミリー向け」と書いてある物件には、自分たちは入居できるのかな? とか。

「SUUMO」は2017年5月に「SUUMO for LGBT」という、LGBTQ+のための特設サイトをオープンしていて、その中に「LGBTフレンドリー」の物件を探せる項目がある。ただ、東京都全体の賃貸住宅物件が1,033,375件あるのに対し、LGBTフレンドリーの物件は722件(ともに2018年11月10日現在)。0.1パーセント未満という結果なんだよね。

小沼:うわー、サービスを立ち上げてくれたのはありがたいけど、それだと逆に傷つくかも。

中野:もちろん、これから普及していく過程だろうし、ここで「LGBTフレンドリー」に分類されていなくても入れる物件はたくさんあるんだけど。

小沼:僕や中野さんが現在住んでいる物件も、特にLGBTフレンドリーをうたってはいなかったしね。「物件がまったく見つからない」と悲観することもないけど、同性カップル特有の探しづらさがあるのも事実。では、それぞれのケースからどんなところが大変だったのかを見ていこう。

小沼:僕の場合は2017年の7月に探しはじめて、9月に今住んでいる物件が見つかった。結果的に2ヶ月で終わったけど、実際はもっと長期戦になると予想してたな。

中野:期間を制限せず、いい物件が見つかるまで探す作戦だったんだよね。不動産仲介業者の人にはカミングアウトした?

小沼:したほうが見つけやすくなるかも?とは何度も考えたんだけど…。もし偏見のある人だったら嫌だな、という気持ちがあって、隠したまま探すことにした。

中野:そのジレンマはあるよね。偏見のある人が担当だったとしても別の仲介業者にお願いしなおせばいいだけなんだけど、万が一あからさまな態度を取られたらすぐには立ち直れなさそう。

小沼:僕たちの担当者はすごく丁寧に対応してくれる人だったから、言っても良かったんじゃないかと思うけど…。でも、対面でいきなりカミングアウトするのって勇気がいるし、関係を隠したまま探す人は多いと思う。

中野:その場合は"友人同士"ってことにするの?

小沼:そうだね。こっちがそう話している以上、仲介業者も深く聞いてはこないけど、問題なのは物件を実際に探すとき。

中野:ルームシェア物件ばっかり勧められたりしそう…。

小沼:そう!でも、ルームシェア物件ってそれぞれの個室が広くて、リビングが狭いところが多いんだよね。理想的なのはリビングが広々とした同棲向けの物件なんだけど、そういう物件のオーナーには「うちはカップル向けで、ルームシェアは受け入れてません」と断られちゃう。

中野:仲介業者の人って、物件探しのときに同性のルームシェアが可能かどうかオーナーに一件ずつ電話して確認してくれるじゃない?担当者が電話口で「あー、そうなんですねー」って言うと、断られたなってわかるから、切ないよね。

小沼:なんだか大変なことをさせている気がして申し訳なくなってくるし、「そもそも関係を隠している自分たちが悪いんじゃないか」という気にもなってくる。結局「明かしたほうが…でも偏見があって嫌な思いをしたら…」という最初の地点に戻っちゃって、堂々巡りなんだよね。

小沼:隠していると、内見のときも一苦労だったな。「ベッドをどこに置くか」みたいな会話って、カップルなら当たり前のようにすると思うけど、友達同士でしていたら怪しまれるんじゃないかとか考えすぎてしまって。

中野:ルームシェアと同棲の間取りって全然違うもんね。隠して進めるとそこはストレスになりそう。

小沼:特に自分は嘘をつき通したいタイプだから、仲介業者さんに勘づかれないかずっとハラハラしてた…おかげで物件に集中できなかったんだよね。彼氏は普通に「ベッドはここに置いて〜」とか言ってたけど(笑)。一つ隠し事があるとそのためにこまごまと嘘をつかないといけなくて、常にうっすらストレスを感じてたかな。

中野:それはやりづらいね。他に何か大変だと感じた点はある?

小沼:同性でカップル向けの間取りを探すだけで選択肢が限られるから、プラスアルファで条件を加えると本当に物件が見つからないことかな。

たとえば、うちは彼氏が「洗面台はこういうのがいい」「このドアの色は帰ってきたときに絶対テンション下がるから嫌」とか、ディテールへのこだわりが強くて(笑)。そうした細かいけど大切なこだわりって、同性カップルが部屋を探すときは諦めざるをえない場合もあるのかもしれない。

中野:細かい点だけじゃなく、立地や家賃のような基本的なところでも「希望と違うけど、全然見つからないから仕方ないよね」って妥協する原因になるよね。

小沼部屋探しに限らないんだけど、妥協することに慣れてるところがあるんだよね。「マイノリティなんだし、選択肢が少ないのは仕方ないか」ってつい思っちゃう

中野:わかる〜(笑)!ちなみに、今の物件は何か妥協したの?

小沼:いや、ほとんどしていないかな。うちの場合は「何月までに引っ越さなきゃいけない!」って言う条件がなかったから、「いい物件が見つかるまで申し込みはしない」ということにしてたんだよね。期間に余裕を持たせることで、細かい条件もなるべく叶う物件を見つけられたんだ。

中野:そうなんだ!ということは、今住んでいる物件には満足?

小沼:うん、かなり!リビングも広くて駅からも近いし、洗面台もきれいだよ(笑)。たくさん物件の候補を挙げたから疲れたけど、想定していたよりも早く決まったしね。

小沼:ただ、「同性カップルの部屋探しってこんなに大変なんだ!」とは思ったなあ。これまで一人暮らしの部屋を探すときは、異性愛者の人と何も変わらなかったと思うんだよね。ゲイであることなんて話題にものぼらなかったし、のぼっても受け流すことができた。

でも、二人で部屋を探すとそうはいかない。"男二人"ということが理由で断られたり、関係を説明できないことに苦い思いをしたり…。自分がゲイだというだけで、社会には色々と壁があることをここまで体感したのははじめてだったな。日常生活で不便を感じていないゲイが部屋探しをすると、そのぶん衝撃が大きいかもしれない。

中野:私たちは今年の4月に物件を探し始めて、7月には住み始めようと話してた。その前は大阪で一緒に暮らしていたから、上京して物件を見ることは頻繁にはできなくて。小沼さんのように時間をかけられなかったから、家賃の上限をできる限り高くして、選べる物件を増やしたんだよね。

小沼:大阪でも二人で暮らしていたなら、そのときの物件はどうやって見つけたの?

中野:当時は仲介業者に勤めている知り合いを頼ったから、スムーズだったの。

小沼:なるほど。知り合いを頼るのはスムーズに探せる近道かもね。仲介業者にカミングアウトはした?

中野:最初に行ったお店では言わなかった。ただ、私たちは同性パートナーシップを結びたかったから、区を限定していたんだよね。でも、やっぱりその区ではないけど近い位置の物件もおすすめされるし、「この人たち区にやたらこだわるな」って思われるのも気まずくて、だんだん行かなくなっちゃった。

小沼:区にそこまでこだわる人ってあんまりいないもんね。悪目立ちしてるんじゃないかと思いはじめると、足が遠のくよなあ。じゃあ、次のお店ではカミングアウトしたの?

中野:うん、お店に入って最初にそのことを話した。同時に二つのお店に行ったんだけど、一つは「あ、そうなんですね〜」ってあっさり。もう一つは「同性カップルの方もよくいらっしゃいますよ」と言ってくれて、どちらも特に嫌な思いはしなかったな。

小沼:えー、そうなんだ!じゃあやっぱり僕も言った方がよかったのかな……。

中野:また堂々巡りに(笑)。おかげで内見はコソコソせず二人で話し合えたから、しっかり決められてよかったよ。ただ、物件のオーナーさんにはふたりの関係性を必ず話したわけではなかった。オーナーの人柄は仲介業者の人のほうがよくわかっているから、話すかどうかはお任せした。

小沼:なるほど、合理的! 結果的に今の物件のオーナーさんには話してるの?

中野:いや、結局決まった物件は企業がオーナーのところだったの。だからあんまり関係性は問われなくて、家賃さえしっかり払えればOKというドライなところだった。

小沼:そんな選択肢もあるんだね。これから部屋を探す同性カップルが知っておくと役に立つかもしれない。仲介業者の人が同性カップルの部屋探しに慣れていなかったとき、「企業がオーナーの物件を探してください」といえば、打率を上げられるかも……。

中野:全部の物件がそうとは限らないけどね。あとはどの仲介業者も関係性の強いオーナーさんはいるはずだし、自社物件を抱えている業者もある。仲介業者がオーナーさんにプッシュしてくれたら入れることもあるので、とにかく仲介業者と仲良くなるのも一つの手かなと感じたよ。

小沼:仲介業者に話すことでスムーズにいったように見えるけど、何か大変なことはあった?

中野:色々あったよ。まず、私たちは同性パートナーシップを結びたかったんだけど、結ぶためにはその区に居住しないといけないの。でも、そもそも居住するための部屋を探すのが大変だった。

小沼:同性パートナーシップ制度を結びたくてその区に住むのに、そもそも同性カップルであることが理由でいい部屋が見つからないってことか。うわー、ややこしい!

中野:制度によって証明できれば、カップル向けの物件にも住みやすかったと思うから、そのジレンマは大きかったな。 でも、ただでさえ限られた条件で探しているのにいろんな条件をつけたり強気で交渉したりしたら"同性カップルは面倒くさい"と思われて住める家がなくなってしまいそうだし。はいって言うしかない場面もあると思ったよ。

小沼:仕方ないと思うしかない場面はやっぱりあるんだね。

小沼:見つかるまでは大変だったと思うけど、今の物件の住み心地はどう?

中野:すごく満足してる!間取りも気に入ってるし、駅からは希望より遠くなっちゃったけど、住んでみたら慣れた(笑)。同性カップルに限らず、時間や予算が限られた中で物件を探せばどこかで妥協はするわけだしね。

小沼:じゃあ、僕も中野さんも紆余曲折はあったけど納得の物件に出合えたわけだ。「住めば都」かもしれないけど、理想に近い物件が見つかっているよね。

中野:そうだね。最初にも言ったけど、男女のカップルに比べて大変なことはあっても、きっと見つかるはず。

小沼:人や条件によってどんな問題があるかも千差万別だから、必勝法を教えたりできないのはもどかしいんだけど……。でも、「こうすればOK」という方法がないなら、ストレスのない方法を探すのが一番だと思う。無理してカミングアウトをしなくてもいいし、言っても平気なら伝えたほうがスムーズかもしれない。

中野:あとはいろんな人の体験を聞くと、どんな苦労があるかを知れて事前に対策しやすくなるよね。




今回の話を通して、同性カップルの部屋探しは"物件の見つけにくさ"と、"心理的な負担"の二つが絡み合い、困難さを形作っていると感じた。

物件が見つけにくいために選択肢が少なく、そこに心理的な負担が重なることで消極的になってしまう。

だが、その中でも時間をかけたり、仲介業者の人と協力することで理想の物件に近づく方法はあるはずだ。二人の生活を営む大切な部屋。誰もが自分らしい部屋を見つけられるよう、この記事が少しでも参考になれば幸いだ。

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