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メディアの中のLGBT それ「実態」と合ってます?講演レポート

2018.12.10

2018年を振り返ると、男性の同性愛がテーマのドラマが大ヒットする一方で、「新潮45」で政治家による差別的な発言が問題になるなど、LGBTQ+をめぐる表現が大きな話題となった。"LGBT"という言葉の認知度は高まってきているが、実際にはまだまだ偏見や無理解が残っている。どのような態度で情報を発信し、また受け取ることが必要なのだろう。

12月2日、「メディアにおけるLGBTQ+の表現のあり方について考えるシンポジウム-それ『実態』とあってます?-メディアの中のLGBT-」が東京大学情報学環・福武ホールにて開催された。

(リポーター:伊藤 まり)

登壇者(左から)
司会・エッセイスト 小島慶子
女装パフォーマー ブルボンヌ
株式会社トロワ・クルール 増原裕子
毎日新聞 藤沢美由紀
名古屋大学 隠岐さや香

まず今年大きな話題となった「おっさんずラブ」について、女装パフォーマーのブルボンヌさんは「当事者の間でもとても人気が高かった。"同性愛"ということがあえて強調されているのではなく、ただただフラットに、純粋な恋愛ドラマに仕上がったのがよかったのでは」と話す。

レズビアン当事者である増原さんも、LGBTQ+がテーマだとつい"差別や偏見を乗り越える"物語になりがちなところ、純粋な恋愛ドラマを楽しめたことがよかったとしつつも、「私はレズビアンだから、女性同士の恋愛ドラマ、『おばさんずラブ』が見たい!(笑)でも、エロくて若くてきれいじゃないと、ドラマとして商業的に成立するのか疑問です」とも。

確かにメディアではLGBTQ+に限らず、きれいなモノとして消費できるものがもてはやされる。特に女性の同性愛は"レズモノ"とされるAVのジャンルがあるほどだ。そこに当事者のリアルな姿は見えてこない。

司会・エッセイストの小島さんは、「キレイな姿、またはテレビ向けの濃いキャラクターだけだと、LGBTQ+のひとたちを自分たちと違う日常の外にいる存在だと感じてしまう。"わかりやすさ"だけでは、自分の周りの職場にいるかも、という想像力にはつながりにくいのではないか」と指摘する。 「まだまだメディアは異性愛者の男性中心で回っています。作り手の多様性だけで全てが解決するわけではないけれど、重要なポイントだと思います」

増原さんは、中野区のパートナーシップ第1号が50代の女性カップルであったことについて「せめてドラマではなくともメディアにそういうリアルな姿が映ることが大事なのでは」と語る。

一方、政治家による差別的な発言が大きな問題となった「新潮45」の件について、増原さんは「公人がヘイトを煽るというのは本当にあってはならないこと。LGBTの直面する困難や差別は確かに見えづらいですが、そこにつけこんで『本当に差別はあるんですか?』と言いながら差別発言をばらまく、とても悪質なものでした。大事件です」と語る。

「新潮45」の差別的な特集には多くの人が批判の声をあげ、実質上の廃刊ということになった。しかし一部の当事者からはこの政治家の発言を擁護する声も上がった。

このことについて、名古屋大学の隠岐教授は、極端な意見が大きく見えてしまうSNSの特徴について指摘し、当事者も分断されてしまっているとする。

「ツイッターなどでは、両極端の意見ばかりが多くシェアされ、人数的には一番多いであろう真ん中あたりの人たちが見えなくなってしまいます。そういうSNSの特徴を理解した上で対策を取ることが大事なのではないでしょうか」

これに対し増原さんは、「構造として、ネトウヨ的な排外思想と繋がりますよね。誰かをラベリングして差別を楽しんでいるとさえ見える人たちの攻撃対象に、ここ最近LGBTQ+が入ってきたという印象です」

パートナーシップ制度の広がりなどLGBTQ+について話題にのぼることが多くなりはしたが、しかしそのことによって政治的な"左右"の議論として扱われることも増えてきてしまったという。本来、人の生き方や人権に関わる問題が政治的な立場に過度に利用され、おいていかれてしまう当事者がいる。

また、取材をする側の人間の無知や偏見も大きな問題だ。毎日新聞の藤沢記者は、「新聞というのは正しい情報というのが大前提だけど、他のテーマと比べ物にならないくらいずさんな言葉が使われています。また、取材を受けた当事者が記者から酷い扱いを受けたという話もよく聞きます」と話す。

藤沢記者自身も、トランス男性を取材したときに、別のトランス男性について「彼女」と呼び指してしまい、強く反省した。こうした経験から自分も含め社内で理解を深めていく必要があると感じ、メディアから取材を受けたことのある当事者に対してアンケートを実施した。
アンケートでは、

・「性的指向」と「性自認」を混同するなど記者が勉強不足だと感じた
・セクシュアリティに関して特定のイメージを押し付けられた
・差別語である「レズ」と呼ばれた
・名前や顔、セクシュアリティについて同意なしに報道された

など、記者の無知や偏見から起きる深刻な問題が明らかになった。「LGBTについて記者が無知であるということは、他の分野について勉強不足であるということ以上に、当事者の方の存在を否定してしまうことに繋がります。取材する側から変わっていかなければならないのです」と藤沢さん。

ブルボンヌさんは、情報を発信する側について「差別的な発言があったときに、嫌だと声をあげ批判することも大事。だけどそれだけじゃなくて、ポジティブな発言でメディアを満たす、というのも一つの手だと思います。『白のなかの黒一点』だと目立つけれど、まわりを可愛い模様でいっぱいにしたら、黒い点も目立たなくなるでしょう?」

一方で、これは情報を受け取る側の問題でもあるという。 「子供の頃、テレビにいわゆる"オネエ"系の人が出てきて、それに対してお母さんがネガティブなコメントをしたことを今でもトラウマとして覚えている当事者がいます。もしそのとき周りの人がポジティブな反応をしてくれていたら、その人はそんなに自分のことを嫌いにならないですんだかもしれない」

今年4月に行われたアンケートで"LGBT"という言葉の認知度は65%にのぼることがわかった。しかし、それが正しく理解されているのか、また、"LGBT"という言葉で括ることで満足してしまっていないか、という問題はまだまだ残っている。

ブルボンヌさんは、わかりやすく名前をつけることの大切さと同時に、4文字で括ることでそれだけしかいないと思われてしまうこと、また正しく理解されないことで間違った表現がされてしまうことを指摘する。「LGBT男性…それってどんな男性よ!(笑)」とブルボンヌさん。

増原さんも、性的指向と性自認の頭文字をあわせたSOGIという単語について、「SOGIの方々」という正しくない使われ方を見かけることが最近はあるそうだ。「それ、みんなですよ…」

隠岐教授は、「大学という場においても、ジェンダーやセクシュアリティというテーマは軽視されてきました。性の問題を、ないことのように扱う風潮も一部にはありました。それが最近ではメディアでもLGBTが認知され、無視出来なくなってきました。すごいことです。でも、そこで止まっていてはだめ。わかりやすさのために間違った言葉で表現してしまう、ということに対して、私達はもっとセンシティブにならなければいけないのでは?」と語る。

言葉だけが先歩きしてしまい、実態は理解されずにいる状況。 「じゃあシスでヘテロの女性なら全員同じ、とも限りませんよね。毎月生理が来ているから同じ、なんて言えません。いわゆる"女性性"というものの説明も、一人ひとり違うんです。それと同じように、LGBTQ+の人たちも多様であるということを理解する段階に、私達はきているのではないでしょうか?」と小島さんは締めくくった。

LGBTQ+の認知度があがると同時に、メディアにおける表現の問題も明らかになり、そのあり方はまだまだ模索の途上だ。メディアも多様化し、一人ひとりが受け手としてだけでなく、発信者になる時代になってきた。次の段階に進めるために、今一度LGBTQ+を巡る表現について考えるときが来ているのではないだろうか。

(撮影:Kong Tung Ki)

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