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ママがふたりの"超普通"の家族 小野春さんが考える「家族ってなんだっけ」

2019.01.17

「子育てするLGBTとその周辺をゆるやかにつなぐ」。そんな活動を行なっている人が、小野春さんだ。

小野さんは、にじいろかぞくの代表をつとめ、ご自身も同性のパートナーと一緒に子育てをする女性。小野さんもパートナーも法的にはシングルマザーなのだが、ひとつ屋根の下で"家族"として生活している。

「うちの子はもうだいぶ大きいので、レズビアンの子育てについての話ならあまり参考にならないかもしれませんが…」と笑う彼女に、"家族"についてうかがってきた。

中野:小野さんは今お子さんと一緒に暮らしているんですよね。まずは家族構成を教えてください!

小野:うちは今、私と、パートナーと、1.5人の子どもが同居しています。

中野:1.5人?

小野:はい。一緒に住んでいるのは、一番下の高校生の息子。それと、娘はいまは高校生なんですが、平日だけお父さん(パートナーの元夫)の家から通学しているんです。それで、休日だけ家に帰ってくる。

中野:なるほど。だから".5(テンゴ)"というわけですね!

小野:そうです!上の息子は大学生なので家を出て一人暮らしをしていますね。

中野:ということは、お子さんは3人ですか?

小野:はい。一番上の大学生の息子と下の高校生の息子が私の実子です。真ん中の娘はパートナーの子です。

↑パートナーの実子である娘さんは、平日はパートナーの元夫と暮らしている。

中野:この生活は何をきっかけに始まったのですか?

小野:この暮らしになったのは、上の子がそろそろ小学生くらいの時期だったかと思います。私もパートナーもそれまでひとり親家庭だったので、子どもたちも寂しいという気持ちがどこかにあったんじゃないかな。遊びに来て帰ろうとすると「え〜帰っちゃうの〜!」ってよく言っていたんです(笑)

中野:可愛らしい…。

小野:ふふふ(笑)たまたま子ども同士の相性も良かったので、「帰っちゃうの?」と聞かれると「じゃあ泊まっていこうか?」となることが多かった。その回数がだんだん増えて、自然に一緒に暮らすようになっていった感じですね。

中野:大きなきっかけがあって「よし、一緒に住むぞ!」となったわけではないんですね。

小野:グラデーション的に一緒に住むようになりましたね。あえて言うなら、あまりに私の生活力がなくてパートナーが見かねたみたい。「このままだとこいつ(小野さん)は死ぬんじゃないかと思った」って言われましたからね!

中野:(笑)

小野:男女だったら"結婚"というきっかけがあって一緒の生活がはじまると思うんだけど、私たちには結婚というものもないからきっかけもなかったんですよね。

中野:小野さんは結婚式もあげていますし、同性パートナーシップも結んでいますよね。人生の中で"家族"を意識するタイミングも多かったのではないかと思うのですが。

小野:そうですね。子どもが小さかったころに、"家族ってなんだっけ"と考えさせられた出来事もありましたよ。

中野:というと?

小野:昔、私の産んだ子どもが入院したことがあるんですね。ようやく退院だ!ってなったときにわたしがどうしても仕事を抜けられなくて、退院の手続きをパートナーにお願いしたんです。そうしたら、退院の日に偶然子どもに別の病気が見つかってしまって。

退院予定だったのに、急遽再入院で検査をしなければならなくなった。だからパートナーが入院手続きをしようとしたら、「血縁関係にない人は手続きはできません。お父さんかお母さんを連れてきてください」と言われてしまったんです。

中野:そう言われてしまうと、小野さんが行くしかないですよね。

小野:でもわたしは仕事中だったから、「この子のお母さんは今は来られません。お父さんとは離婚しています」とパートナーが伝えてくれました。そうしたら病院側は、「離婚していてもいいのでお父さんを連れてきてください」、と…。

中野:一緒に住んでいないお父さんを、ということですか?

小野:そうです。子どもの父だから、子どもにとって"親"であるということは間違いありません。でも、当時は父親と子どもは会えていなかったし、子どもの健康状態や生活もわかっていなかったんです。

それなのに、血縁関係があるだけで"家族"とみなされるのだということが、ずっと胸に引っかかっていました。私たちとパートナーは家族なのに、関係性を証明できるものが何もないんだ、ということも。

中野:その約10年後に小野さんはパートナーシップを結ばれたと思うんですが、それで何か変わったことはありましたか?

小野:世田谷区でパートナーシップを申請した3ヶ月後に乳がんが発覚したんですが、病気の告知を受けるのも家族しかできないんですよね。「ご家族の方だけ連れてきてください」と言われました。

中野:家族というのは、戸籍上の…?

小野:私も"ご家族の方だけ"と言われたとき、「この病院ではどこまでが家族ですか…?」と思いました。結局、病院次第なんですよね。法律で誰が告知を聞くことができて、誰が聞けないと決まっているわけではないんです。

中野:そうなんですね。私は今のところ大きな病気をしたことも誰かの告知に立ち会ったこともないので、知りませんでした。

小野:家族の定義って場面によって違っていて、婚姻は国が決めるものだけれど、医療の場では、病院次第です。本当はそんなこと考えずに"家族って言われたら家族!"で済ませられればいいんですけど。

それにそもそも、本当は家族でないとダメとも限らないんですって。本人が「この人に告知を聞いてほしい」と病院に言ってみると、案外通ることもありそうですよね(※)。血縁家族以外、いまは想定されてないだけで。

中野:なるほど。結局、乳がんの告知の際はパートナーも一緒に聞けたんですか?

小野:はい、乳がんでかかった方の病院はパートナーも家族扱いで良いということで、一緒に告知を受けられました。でも、大丈夫ということが判明するまでは「血縁上の家族じゃないとダメと言われるんじゃないか」という不安はあって。バッグに世田谷区のパートナーシップ証明書を忍ばせていましたね。

パートナーシップを結ぶときも「なんの効力も持たない」と言われていたし、意味がないという人もいます。けれど、いざというときに家族であることが証明できるというのはすごく大きなことだと思いますね

中野:お子さんたちの間では、家族とかきょうだいという感覚はあるんですか?

小野:実は数年前、子どもたちが面白い話をしていました(笑)。長男が娘に向かって「俺たちってきょうだいじゃないよな」って言うんです。「俺と弟はきょうだいだけど、お前は違うよな」と。わたしは「ふーん、きょうだいじゃないんだー」と思って聞いていたわけなんですが、そのあとに「でも、家族ではあるよな」と付け加えていて。

中野:へえ〜面白い解釈ですね!

小野:そのころの長男にとって「きょうだいは血が繋がっているもので、娘は血縁ではないからきょうだいではない。しかし家族ではある」…という定義だったようですね。最近は、長男も娘のことを「妹が…」と話すこともあります。名前にこだわっているわけではないので、彼らが思いたいように思ってくれればいい、とわたしは思っているのですが。

中野:思いたいように思えばいい。素敵な言葉ですね。彼らのお母さんでもある小野さんにとっては、"家族"ってなんなのでしょうか。

小野:うーん、それってなんて答えたらいいのかしらね。あまりに壮大な質問だから…(笑)。でもまずは、他人から定義されるものではなく、自分たちの中で家族だと思っていたら家族ってことで良いとは思っていますね。

世の中では、血縁者が家族とか、法律上の家族が家族って意識がどうしてもあるじゃないですか。「お父さん・お母さん・子ども」で家族だって概念もまだまだある。でも実態は、その形式の家族って日本の世帯の3割を切っているんですよね。

中野:それなのに、それがスタンダードだと思われてしまっている…。

小野:本当はいろんな形の家族がいるけれど、可視化が難しいんですよ。特に子どものいるLGBT家庭だと、子どもを守ることを最優先にしますからね。幻の"お父さん・お母さん・子どもの家族"のイメージはなかなか消えていきませんよね…。

中野:にじいろかぞくにも、色々な形の家族がいますよね?

小野:もちろんです。にじいろかぞくのなかには、子どものいない方や、ヘテロセクシュアルの方もいらっしゃいます。会の中でも「家族ってなんだっけ?」というのはよく話題に上がりますが、答えも多様ですね。長年一緒に暮らしていても家族って感覚を持っていない同性カップルもいれば、単身赴任でずっと離れて暮らしていても家族だと答えるヘテロセクシュアルの会員さんもいます。一緒に食卓を囲む人はみんな家族だって言う人もいますよ。

中野:人の数だけ、家族の形有り…ということなのかもしれませんね。

小野:そうですね。少なくともわたしにとっては、今の自分の家族は超普通の家族です。周りの人から「家族なの?」って聞かれれば「いや家族ですけど?」と自然に思うし、"法律的には他人"ということに直面する場面では、「うわぁびっくりした!そういえば家族じゃなかった!うっかり忘れてた!!」ってなるくらいです(笑)。

「そっか、私たちはこの場面では"家族"ではないのか」と思うことがあるのはきっと、普段あまりにも自然に自分たちのことを家族だと思っているから。

家族の定義って、もしかしたら一人ひとりにルールがあって、何が家族だと思うかはその人に託されているものなのかもしれないですよね。

インタビューの終わりぎわ、小野さんはわたしに「逆に、中野さんにとって家族ってなんですか?」と問いかけた。

これまで何度も「家族ってなんだっけ」と自分自身に問いかけてきたつもりなのに、いざ言葉にするとなると難しい。「帰りたいと思う場所にいる人が"家族"ですかね…。今はまだ、父と母がわたしにとっての家族なんですけど…」

わたしが出した答えはあまりにも曖昧で、自信なさげだっただろう。けれど小野さんの言うように、家族の定義が一人ひとりに託されているものだとしたら、今はきっと、それでいい。

わたしからも、もう一度皆さんに問いかけたい。 あなたにとって家族ってなんですか? 私たちと一緒に考えてみませんか?「家族って、なんだっけ」と。

(撮影:松村 雄介)

(※病院での告知や見舞いの際の規定は、病院によって異なります。必ず病院・担当医師への確認をお願いいたします)

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