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血の繋がりがなくたって、僕たちは"家族"になれる

2019.01.31

"お父さんバンク"という言葉を聞いて、どんなものを想像するだろうか?

「世の中にはもしかしたら、自分の得意技やエネルギーを持て余してる大人がたくさんいるのでは?そしてその得意技を必要としている人もたくさんいるのでは⋯⋯。この両者が結びつく仕組みがあったら。世界はもっとやさしい場所になるのでは?」この思いつきから生まれた【仕組み】がお父さんバンクです。 「お父さん」は老若男女問わず誰でもなることができます。自分の〈得意技〉や〈好きなこと〉を、必要としている誰かのために使って「お父さん」たちもまたうれしい。

お父さんバンク | 1人よりふたり、2人よりたくさん

「得意技を持て余している大人と、得意技を必要としている人を結びつける」ための仕組み、それがお父さんバンク。 「1人よりふたり、2人よりたくさん」を合言葉にたくさんのお父さんが集まっている。お父さんバンクに登録しているお父さんは、お父さん世代の男性だけじゃない。 若い男性も、女性も、家族丸ごとで「お父さん」をしている人だっている。

この仕組みの「お父さん」は、家族をどんなものだと思っているんだろう。そして私たちが当たり前に定義してきた「お父さん」だけが、本当にお父さんだったのだろうか? お父さん体験を通して、お父さんの定義について考えてみたいということではじまった今回の企画。お父さんバンクに登録しているイチカワ家 にご協力いただいた。

シングルマザーで3人の姉妹を育てる母、恵梨子さんにお話を伺い、生後3ヶ月の子を持つ新米パパの今井と、女性である合田は、そのままその3人の姉妹たちのお父さんをしてきた。

もちろん合田はお父さんになるのは初めてだし、自分がお父さんになる日が来るなんて思っていなかっただろう。

イチカワ家に到着、母の恵梨子さんに「今日はお父さんになりきって子供たちと触れ合います。よろしくおねがいします」とご挨拶すると、「自分の家だと思ってくださいね!」」と笑顔で迎え入れてくれた。

早速お父さんになりきって「ただいま〜」と、リビングまで行くと待っていたのは5歳の可愛らしい三女。

「あれ?今日は保育園は行ってないの?」と聞くと、「今日はママといたいから、保育園行かなかったの」と、なんとも可愛らしい返答。お母さんの恵梨子さんは、「子供の感情を受け入れることって大切だと思うんです」と話してくれた。

三女と遊びながら長女と次女の帰りを待つことに。

まったく人見知りしない三女。 ゲームをしたり、じゃれあったり楽しく遊んでいると、次女(小学4年生)が帰宅。

「さあ、宿題をやるよ!宿題やったら公園に遊びに行こうね」というと、早く遊びに行きたいが為にすぐに宿題開始。

宿題は合田が厳しく(優しく)チェック。

素晴らしい集中力を発揮した次女は20分ほどで宿題を終わらせ、長女の帰宅を待たずに公園へ。

家を出るなり、元気いっぱいの2人は公園へ走り出す。

「車が来たら危ないからゆっくり行こう!!」というお父さんの声も耳に入らず、猛ダッシュ。子供が多いと親は大変だ。

公園では、子供たちとたくさん戯れました。

サッカーしたり

ブランコで遊んだり

無邪気で元気いっぱいの子供たちと戯れていると自然と笑顔になる。

しばらく遊んでいると、長女が到着。

長女は明日、学校で大事な発表があるとのこと。 家に帰って発表の練習を手伝うことに。

合田が子供たちと遊んでいる間に、私はお母さんの恵梨子さんにお話を伺った。

今井:お父さんバンクに登録されたきっかけはなんですか?

恵梨子さん:きっかけは離婚ですね。ラムピリカという喫茶店をやっているちあきさんという方に「お父さんバンク」を紹介していただいたのがきっかけです。離婚してシングルマザーになりたてだったんですけど、どうしても行きたかったイベントがあって、その時に子供を預けるところがなくて預かってもらえないかちあきさんに相談した時に、「お父さんバンク」を紹介してもらったんです。

今井:なるほど。

恵梨子さん:そこでお父さんバンクに登録して、"お父さん"に預かってもらったのが最初ですね。

今井:実際に活用されてみてどうですか?

恵梨子さん:それはもう、超絶有り難いですよ。やっぱりシングルマザーにとって子供を預かってくれる環境があるって、すごく有り難いです。

今井:恵梨子さん自身もお父さんをやることはあるんですか?

恵梨子さん:何回かやってます。でも、子供たちが依頼を受けることが多いです。

今井:え?どういうことですか?

恵梨子さん:兄弟(姉妹)体験をさせたいとか、男の子がいるお母さんが女の子を育てるってどんな感じだろうということで依頼をもらったり、あとは子供がいないシングルの方がお父さん体験したいというのもありましたね。それはお父さん体験というよりも、まるっと家族体験でしたけどね。

今井:楽しそう!なるほど、色んな使い方があって面白いですね。でも、お子さんを知らない人に預けるって心配じゃないですか?

恵梨子さん:う〜ん。お父さんバンクを通じて知り合う人ってコンセプトを理解されているので、ある程度安心感はありますね。でも実際にお願いする方はカフェとかで一度はお会いしたことがある方ですね。まったく知らない人には依頼したことないです。

今井:一度はお会いして信頼できる人かどうかは見てるんですね。恵梨子さんが色んな人を受け入れる自由なスタンスになったきっかけってなんですか?

恵梨子さん:非暴力コミュニケーションを学んだことですね。

今井:へえ、それはなんですか?

恵梨子さん:詳しくは調べて頂いたほうがわかると思うのですが、これを学ぶ前は、私も「母親とはこうあるべきだ、父親とはこうあるべきだ、家族とはこうあるべきだ」という価値観に支配されていたんです。そのような「こうあるべき」という価値観から解放されたのがきっかけですね。

今井:「こうあるべき」という価値観から解放されるって大事なことですよね。私たちのメディアでもそれをテーマにしています。

恵梨子さん:家族のあり方なんて、色々あると思うんです。こうあるべきだにとらわれて苦しんでる人はたくさんいますよね。

恵梨子さん:う〜ん、難しい質問ですね…一般的な定義としては血の繋がりというのがありますけど、私にとっては「その人と繋がっているな〜」と感じる、"繋がり感"が大事かな。

今井:繋がり感。なるほど。

恵梨子さん:そう。繋がり感をどこに感じるかは、人によって違いますよね。血縁があることに感じる人もいれば、経験のシェアによって感じる人もいると思うんです。私はどっちもあるかなと感じています。

今井:私も今日お父さんをやってみて、子供たちと繋がり感、感じたなあ。お父さんバンクをやってみて家族観って変わりましたか?

恵梨子さん:やってみてわかったのは、血縁がなくたって一緒に寝食をともにする経験、そこで生まれる気持ちの繋がりっていうのは十分家族になりうるということ。血の繋がりは切っても切れない感じはするけれど、経験のシェアによって育まれる一体感って気持ちの上ではすごく太く濃いものになる感じはありますよね。

今井:すごく共感します。子供たちは家に色んな人がくることに対してどう思ってるんでしょうか?

恵梨子さん:それは子供たちに直接聞いてください(笑)。長女は私よりしっかり答えてくれると思いますよ。

近くにいた長女に質問をしてみました。

今井:お父さんバンクで色んな人がくるけど、恐くない?

長女:ぜんぜん。楽しいよ!

今井:そうなんだ。やっぱり男の人が多いのかな?

長女:うん。でも、男の人でも女の人でもなんでもいい。こないだ姉妹体験しに行ったんだよ。すごく楽しかった!

イチカワ家のお父さん体験を終え、一日を振り返る。

「男の人でも女の人でもなんでもいい」という言葉が自然にでてくるって、なんて素敵なんだろう。お父さんバンクを通じて、色んな”お父さん”と触れ合うことで、”ふつう”の価値観にとらわれずに子供を育むことができるのかもしれない。

そして母である恵梨子さんは、"血縁を越えた繋がり感"を大切にされている。 そんな家族観のイチカワ家で一日お父さん体験をすることで我々Paletteにとって新たな気づきを与えてくれた。

家族のあり方は多様である。

血縁という切っても切れない繋がりはあるけれど、経験をシェアすることでそれ以上の繋がり感を感じることができれば、それはもう「家族」といえるのかもしれない。

(撮影:松村 雄介)

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